「年収が上がったら、全部に高い税率がかかるんでしょ?」
この誤解をしている方、実はとても多いです。
結論から言うと、それは間違いです。
日本の所得税は「累進課税」という仕組みで、課税所得が増えるほど税率は上がりますが、すべてに同じ税率がかかるわけではありません。
日本の所得税は累進課税で、課税所得が増えるほど税率も段階的に上がります。ただし、すべての所得に同じ税率がかかるわけではなく、195万円以下は5%、195万円超〜330万円以下は10%といったように、金額の区間ごとに異なる税率が適用されます(2025年現在・国税庁速算表より)。
ここを正しく理解するだけで、税金の見え方がまったく変わります。
私自身、FPの勉強を始めるまでは「年収が上がったら全部に高い税率がかかる」と思い込んでいました。
でも実際に自分の課税所得を計算して「自分が今どのゾーンにいるのか」を初めて確認したとき、税金に対する感覚がガラッと変わりました。
「税率を知ることは、自分のお金を守る力を知ること」
この記事では、課税所得と税率の仕組みを具体例と私自身の体験を交えてわかりやすく解説します。
所得税はどうやって計算されるの?
所得税は次の4ステップで計算されます。
この記事で解説するのはSTEP3「税率をかける」の部分です。

所得税は「①所得を計算→②所得控除を引く→③税率をかける→④税額控除を引く」の4ステップで決まります。この記事ではSTEP3「税率をかける」の部分を詳しく解説します。
▼ STEP1〜2(所得・所得控除)の解説はこちら


▼ STEP4(税額控除)の解説はこちら

課税所得とは?年収との違いは?
課税所得とは、実際に税金がかかる金額のことです。
計算式はシンプルです。
所得 − 所得控除 = 課税所得
つまり、課税所得が小さいほど税金も安くなるということです。
そして、この課税所得に対して「税率」をかけて所得税が決まります。
さやか「年収じゃなくて”課税所得”に税率がかかるんだ。同じ年収500万円でも、人によって税金が違うってこと?」



「そうです。同じ年収500万でも、控除をたくさん使っている人は課税所得が小さくなるので、税金が安くなります。だから”控除を知ること”が節税の第一歩なんです」
▼ 年収・所得・手取りの違いを知りたい方はこちら


税率の仕組みは?累進課税って何?
日本の所得税は「累進課税」です。
課税所得が増えるほど税率も段階的に上がりますが、すべてに同じ税率がかかるわけではありません。
一定の金額ごとに区切られて、それぞれの区間に異なる税率が適用される仕組みです。
言葉だけだとイメージしにくいので、まず「階段」のイメージで見てみましょう。


累進課税は「階段」のイメージです。課税所得250万円の人なら、195万円までは5%、超えた55万円分にだけ10%がかかります。年収が上がっても、上がった分にしか高い税率は適用されません。



「全部に高い税率がかかるんじゃないのか。それなら年収が上がっても損はしないってことだな」



「はい。”年収が上がったら税金で損する”というのは完全な誤解です。上がった分だけ高い税率がかかるだけで、それまでの部分の税率は変わりません」
所得税の税率はいくら?(速算表)
| 課税所得 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 195万円以下 | 5% | 0円 |
| 195万円超〜330万円以下 | 10% | 97,500円 |
| 330万円超〜695万円以下 | 20% | 427,500円 |
| 695万円超〜900万円以下 | 23% | 636,000円 |
| 900万円超〜1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
| 1,800万円超〜4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
| 4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
最高税率は45%。
ここに住民税10%を加えると最大で55%の税率になります(復興特別所得税2.1%を除く)。
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年収500万円の所得税はいくら?
ここから実際に計算してみましょう。
会社員・年収500万円・独身のケースで、所得税がいくらになるか確認します。
前提条件
・年収:500万円
・給与所得控除:約144万円
(国税庁・令和2年分以降の給与所得控除額より)
・基礎控除:48万円
・社会保険料控除:約75万円
計算の流れ


年収500万円の会社員(独身)の場合、給与所得控除と基礎控除・社会保険料控除を差し引いた「課税所得233万円」が税率10%のゾーンに該当し、所得税は約135,500円となります。年収=税金がかかる金額ではなく、控除を差し引いた後の課税所得に税率がかかる点がポイントです。
課税所得を下げて節税するには?
ここまでの計算を見ると、ひとつ重要なことに気づきます。
課税所得を下げれば、そのまま税金が下がるということです。
課税所得を下げる方法は、大きく2つあります。
① 所得控除を増やす
iDeCo・ふるさと納税・生命保険料控除など、使える控除を増やすことで課税所得が下がり、税金が減ります。
▼ 所得控除の全種類と私が使っている6つの控除はこちら


▼ iDeCoの節税効果はこちら


② 経費を正しく計上する(個人事業主の場合)
個人事業主は、事業に必要な経費を差し引くことで所得そのものを小さくできます。
さらに青色申告を選択すれば、最大65万円の特別控除も使えます。
とはいえ、経費の管理や青色申告は手作業だと負担が大きいもの。会計ソフトを使えば、銀行口座やクレカと連携して自動で帳簿がつくれます。
▼ 個人事業主の経費はこちら


▼ 青色申告の控除はこちら


【実体験】
副業の赤字で税金が下がった
ここで、私自身の体験をお話しします。
副業で個人事業主として活動していると、売上よりも経費が大きくなり、赤字になる年があります。
実際、事業を始めた初期に設備投資や環境整備にお金をかけた結果、その年は事業所得が赤字になりました。
普通なら「赤字=損」なのですが、実はこのとき、税金が下がったのです。
これが「損益通算」という仕組みです。
損益通算とは?副業の赤字で税金が下がる仕組み
事業所得の赤字を、給与所得(本業の給料)と相殺できる制度です。
つまり、
給与所得 − 事業所得の赤字 = 合計所得が減る
→ 課税所得が減る
→ 税金が下がる
たとえば給与所得が356万円、事業所得が−50万円(赤字)なら、
356万 − 50万 = 306万円(合計所得)
この306万円から所得控除を引いて課税所得を計算するので、赤字の分だけ課税所得が下がり、結果的に税金が戻ってきたのです。



「正直、赤字のときは落ち込みました。でも確定申告をしたら、税金が戻ってきた。”副業が税金対策にもなるんだ”とそのとき初めて実感しました」
開業届は無料で提出できますが、手書きだと迷いやすいもの。フォームに沿って入力するだけで開業届が完成するサービスもあります。
▼ 副業の所得区分(事業所得 vs 雑所得)について詳しくはこちら


▼ 副業の確定申告(20万円以下・赤字)について詳しくはこちら


▼ 確定申告の全体像はこちら


▼ 開業届についてはこちら


よくある質問(FAQ)
- 年収が上がると損するって本当ですか?
-
いいえ、誤解です。累進課税は「上がった分」だけ高い税率がかかる仕組みで、それまでの所得の税率は変わりません。年収アップで手取りが減ることは原則ありません(社会保険料の等級変動を除く)。
- 課税所得と年収はどう違うのですか?
-
年収は会社から支払われる総額、課税所得は「年収 − 給与所得控除 − 所得控除」で計算される、実際に税金がかかる金額です。同じ年収500万円でも、控除の使い方次第で課税所得は大きく変わります。
- 副業の赤字は必ず損益通算できますか?
-
できるのは「事業所得」に分類される場合です。雑所得では損益通算できません。開業届を提出し、帳簿をきちんとつけて継続的に事業を行っていれば、事業所得として認められやすくなります。
まとめ:自分の税率帯を知ることが第一歩
- 税金は「課税所得」に対してかかる
- 税率は段階的に上がる(累進課税)
- すべてに同じ税率がかかるわけではない
- 課税所得を下げれば税金も下がる
そして何より大切なのは、自分がどの税率帯にいるか把握することです。
それがわかれば、「あといくら控除を増やせば税率が変わるか」という戦略的な考え方ができるようになります。
税金の知識は、知れば知るほど自分のお金を守る力になります。



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