「離婚したら、配偶者の年金を半分もらえる」
——そう聞いたことはありませんか。
実はこれ、少し誤解があります。
離婚時の年金分割は「年金額そのもの」ではなく「厚生年金の記録」を分ける制度で、受け取れる金額にも限度があります。さらに2026年4月の改正で、請求できる期限が大きく変わりました。
この記事では、1級FP技能士が仕組み・金額・2026年の最新ルールをわかりやすく整理します。
離婚の年金分割で分けられるのは「厚生年金(報酬比例部分)の記録」だけで、基礎年金は対象外です。受け取る側の年金は平均で月約9万円どまり。2026年4月以降に離婚した場合、請求期限は「離婚翌日から5年以内」に延長されています。
離婚の年金分割とは?
何が分けられるの?
年金分割とは、離婚するときに、婚姻期間中の厚生年金の記録を夫婦で分け合う制度です。会社員の夫と専業主婦の妻のように、夫婦で年金額に差が出るケースで、少ない側の老後を支える目的でつくられました。

分割されるのは「厚生年金の報酬比例部分の記録」だけです。1階部分の基礎年金(国民年金)は対象外なので、自営業同士の夫婦には年金分割はありません。
分けられるのは「厚生年金の記録」だけ
分割の対象は、厚生年金の「標準報酬(給与・賞与の記録)」です。受け取れるお金そのものを半分こするのではなく、年金額を計算するもとになる“記録”を分けるイメージです。年金制度の全体像は別記事で詳しく解説しています。


「年金額」ではなく「標準報酬の記録」を分ける仕組み
記録を分けた後は、それぞれが自分の受給開始年齢になってから、分割後の記録にもとづいた年金を受け取ります。相手が亡くなっても、分けてもらった自分の記録は影響を受けません。
「年金を半分もらえる」という言葉のイメージが先行しがちですが、正確には“記録の分割”です。すぐに現金が振り込まれるわけではなく、効果が出るのは老後から、という点を最初に押さえておくと混乱しません。
合意分割と3号分割は何が違う?
合意分割(婚姻期間全体・合意が必要)
2007年4月1日以後の離婚が対象で、婚姻期間全体の厚生年金記録を分けられます。割合は当事者の合意(まとまらなければ裁判手続き)で決まり、上限は2分の1。共働きでも、報酬の多い側から少ない側へ分割できます。
3号分割(第3号期間のみ・合意不要で1/2)
2008年4月1日以後の離婚が対象で、専業主婦(夫)など国民年金「第3号被保険者」だった期間の記録を、相手の合意なしで2分の1に分けられます。ただし対象は2008年4月以降の第3号期間に限られます。
| 項目 | 合意分割 | 3号分割 |
|---|---|---|
| 対象となる離婚 | 2007年4月1日以後 | 2008年4月1日以後 |
| 分割の対象期間 | 婚姻期間の全体 | 2008年4月以後の第3号被保険者期間のみ |
| 分割の割合 | 合意または裁判で決定(上限1/2) | 1/2で固定 |
| 当事者の合意 | 必要 | 不要 |
| 手続きする人 | 当事者の一方 | 第3号被保険者だった人 |
| 請求期限 | 離婚翌日から5年以内(2026年3月31日以前の離婚は2年) | |
分割できる範囲が広いのは合意分割です。3号分割は相手の合意が要らず手軽ですが、2008年4月より前の期間は対象外。多くのケースでは合意分割の方が増える金額は大きくなります。
結局どっちを使えばいい?
受け取る側は、原則として合意分割の方が有利です。合意分割を請求すると、対象期間に第3号期間が含まれていれば、3号分割も同時に請求したものとみなされます。まずは合意分割を軸に考えるのが基本です。
年金分割でいくら増える?
「半分もらえる」は本当?

分割を受ける側の年金は、分割後でも平均で月約9万円。これだけで生活費をまかなうのは難しく、別の備えが前提になります。
受ける側の平均は月約9万円
厚生労働省「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、合意分割を受けた側の年金月額(国民年金を含む)は、分割前が約5万8千円、分割後が約9万1千円。
差し引き月約3万3千円の増加です。「半分」という言葉のイメージほど大きくはない、というのが現実です。
分割しても老後資金は別途必要
年金分割は「老後を底上げする制度」であって、「老後を安泰にする制度」ではありません。分割後の月約9万円だけでは生活費に足りないため、離婚を機に自分名義の資産づくりを始めることが大切です。
NISAなどを使い、少額からでも長期で積み立てていく発想が役立ちます。

年金分割の手続きは「やって損のない権利」です。一方で、増える金額には限度があります。制度で“受け取れる分”を確保しつつ、“自分で育てる分”を並行して準備する。この二段構えが離婚後の家計を守ります。
【2026年改正】請求期限が2年から5年に延長された

2026年4月1日以後の離婚は請求期限が「5年以内」。2026年3月31日以前の離婚は従来どおり「2年以内」なので、過去に離婚した方は自分の期限を必ず確認しましょう。
2026年4月以降の離婚は「5年以内」に
これまで年金分割の請求期限は「離婚翌日から2年以内」でした。2026年4月1日施行の改正で、2026年4月1日以後の離婚については「5年以内」に延長されています。
引っ越しや姓の変更で忙しく、うっかり期限切れになる人を減らすための見直しです。準備の時間は増えましたが、忘れないよう早めの手続きが安心です。
手続きの流れ(3ステップ)
年金事務所で「年金分割のための情報通知書」を請求し、分割の対象期間や按分割合の範囲を確認します。離婚前でも請求できます。
当事者で按分割合を話し合います。まとまらない場合は家庭裁判所の調停・審判で決定できます。3号分割のみなら不要です。
離婚後、戸籍謄本などを添えて年金事務所に「標準報酬改定請求書」を提出します。期限内(原則5年以内)に必ず手続きを終えましょう。
自分の年金記録は「ねんきん定期便」やねんきんネットでも確認できます。分割を検討する前に、現状を把握しておくとスムーズです。

離婚と年金分割のよくある質問
- 共働きでも年金分割はできる?
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できます。年金分割は報酬の多い側から少ない側へ記録を分ける制度なので、共働きでも収入差があれば対象になります。差が小さいと分割される額も小さくなる点は押さえておきましょう。
- 年金分割をしないとどうなる?
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請求しなければ記録は分割されず、将来の年金は増えません。期限(原則、離婚翌日から5年。2026年3月31日以前の離婚は2年)を過ぎると請求できなくなるため、対象になりそうな方は早めの確認がおすすめです。
- 離婚後に元配偶者が亡くなったら、分割された年金はどうなる?
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すでに分割を受けた自分の記録は、元配偶者が亡くなっても影響を受けず、そのまま自分の年金として受け取れます。なお離婚後は元配偶者の遺族年金の対象にはならない点も、あわせて理解しておきましょう。
まとめ:制度を正しく知り、その先の備えまで
- 分けられるのは厚生年金の報酬比例部分の記録のみ。基礎年金は対象外
- 合意分割は婚姻期間全体、3号分割は2008年4月以降の第3号期間のみ
- 受ける側の年金は分割後でも平均月約9万円が目安
- 2026年4月以後の離婚は請求期限が5年に延長(それ以前は2年)
- 分割だけに頼らず、NISA等で自分名義の老後資金も準備を
年金分割は「使える権利は確実に使い、足りない分は自分で備える」が基本です。まずは自分の年金記録を確認し、老後資金の準備とあわせて考えていきましょう。次の記事で、老後に必要なお金の全体像を整理しています。

- 日本年金機構「離婚時の年金分割」(2026年4月1日更新)
- 厚生労働省「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 日本経済新聞「別れた夫婦の年金分割、4月から請求期限5年に」(2026年1月)
- ※本記事は2026年(令和8年度)時点の情報です。制度・金額は改定される場合があります。個別のケースは年金事務所等でご確認ください。

