併給調整とは?2026年度の年金の併給ルールをFPが図解

「遺族年金をもらっているけれど、自分の老齢年金も出る年齢になった。両方もらえるの?」。

年金には「一人一年金」という原則があり、複数の年金を受け取れるときは、原則どれか1つを選ぶことになります。

この仕組みを「併給調整(へいきゅうちょうせい)」といいます。ただし、すべてが「1つだけ」ではなく、両方もらえる例外もあります。

この記事では、2026年度(令和8年度)のルールをもとに、「どの年金とどの年金なら一緒にもらえるのか」を、FP1級の視点で早見表と図解にして整理します。

この記事の結論

併給調整とは、年金の「一人一年金」を原則とする仕組みです。原則はどれか1つを選択しますが、同じ支給事由(老齢基礎+老齢厚生など)は両方もらえます。さらに65歳以降は、老齢と遺族など事由が違う組み合わせの一部も併給できます

目次

併給調整とは?「一人一年金」の原則をわかりやすく

併給調整とは、2つ以上の年金の受給権を持つ人について、原則としてどれか1つを選んで受け取り、ほかの年金は支給を止める仕組みです。公的年金は「一人一年金」が大原則だからです。

たとえば、自分の老齢年金の受給権があり、同時に亡くなった配偶者の遺族年金の受給権もある場合。65歳より前は、原則としてどちらか一方を選択することになります。

年金の一人一年金の原則(複数の受給権から1つを選択し他は支給停止)を示した図

上の図のポイント

併給調整の原則は「1つを選び、ほかは支給停止」です。ただし同じ支給事由の「基礎年金+厚生年金」はセットで1つの年金とみなされ、両方を受け取れます。

一人一年金ってどういうこと?

公的年金には「老齢」「障害」「遺族」という3つの支給事由があります。それぞれに基礎年金と厚生年金があるため、人によっては複数の受給権が重なることがあります。

そのときに「全部を満額もらう」のではなく、原則1つに整理するのが一人一年金の考え方です。選んだ年金は受給でき、選ばなかった年金は支給停止になります。なお、選択はいつでも将来に向かって変更可能です。

年金全体の「2階建て(基礎年金+厚生年金)」の構造を先に押さえておくと、併給調整の理解がぐっと早くなります。

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なぜ全部はもらえないの?

年金は「働けなくなった・亡くなった・年をとった」といった同じような生活保障を、二重・三重に支給しないという考え方で設計されています。

たとえば自分の老後の生活費を支える「老齢年金」と、配偶者を亡くした人の生活を支える「遺族年金」。どちらも”生活の土台を支える”目的が重なるため、原則は1つに調整されるわけです。

FP1級の視点

相談現場では「2つ分もらえると思っていた」という誤解が本当に多いです。まず「原則は1つ」と割り切り、そのうえで”例外で両方もらえる組み合わせ”を覚えるのが、混乱しないコツです。

どの年金が併給できる?2026年度の早見表

同じ理由なら両方もらえる(同一支給事由)

まず押さえるべきは、同じ支給事由の「基礎年金+厚生年金」はセットで1つの年金とみなされ、両方もらえるという点です。具体的には次の3組です。

①老齢基礎年金+老齢厚生年金
②(1級・2級の)障害基礎年金+障害厚生年金
③遺族基礎年金+遺族厚生年金

2026年度の年金の併給できる組み合わせを一覧にした早見表の図

上の図のポイント

同じ支給事由(老齢どうし・障害どうし・遺族どうし)の基礎+厚生は必ず両方もらえます。事由が違う組み合わせは原則どちらか一方を選択しますが、65歳以降に限り一部が併給可(△)になります。

スクロールできます
受給権の組み合わせ老齢厚生年金障害厚生年金遺族厚生年金
老齢基礎年金○ 併給可× 一方を選択△ 65歳以降
障害基礎年金△ 65歳以降○ 併給可△ 65歳以降
遺族基礎年金× 一方を選択× 一方を選択○ 併給可
※2026年度(令和8年度)時点。○=併給可、△=65歳以降は併給可、×=いずれか一方を選択。同一事由(老齢どうし等)の基礎+厚生は1つの年金として両方受給。

65歳以降は例外で併給できる組み合わせがある

支給事由が違っても、65歳以降に限って併給できる組み合わせがあります。代表的なのは次のようなケースです。

・老齢基礎年金 + 遺族厚生年金(自分の老齢基礎をもらいつつ、配偶者の遺族厚生も受け取る)
・障害基礎年金 + 老齢厚生年金
・障害基礎年金 + 遺族厚生年金

「自分の基礎年金は確保したうえで、配偶者由来の厚生年金などを上乗せできる」イメージです。逆に65歳より前は、こうした”事由が違う組み合わせ”は原則どちらか一方を選びます。

FP1級の視点

覚え方はシンプルです。「基礎は自分の事由、厚生は別の事由でも65歳以降ならOK」。たとえば自分の老齢基礎に、亡き配偶者の遺族厚生を足せる、という形が典型です。細かい数式より、この”型”で覚えると忘れません。

老齢厚生年金と遺族厚生年金はどう調整される?(65歳以上)

もっとも相談が多いのが、自分の老齢厚生年金と、配偶者の遺族厚生年金の両方の受給権を持つケースです。65歳以上では、この2つは「差額支給」というルールで調整されます。

自分の老齢厚生年金が優先、不足分が遺族厚生年金

65歳以上では、まず自分の老齢厚生年金が全額支給されます。そのうえで、遺族厚生年金の額が自分の老齢厚生年金を上回る場合に、その差額分だけが遺族厚生年金として支給されます。

つまり、自分の老齢厚生年金のほうが多ければ、遺族厚生年金は実質ゼロになることもあります。自分で払った保険料に対する給付(老齢厚生)が優先される、と理解するとわかりやすいでしょう。

65歳以上の老齢厚生年金と遺族厚生年金の差額支給のしくみを示した図

上の図のポイント

65歳以上は、自分の老齢厚生年金が先に全額支給され、遺族厚生年金はその差額だけが上乗せされます。老齢厚生年金が遺族厚生年金より多ければ、遺族厚生年金は支給されません

遺族厚生年金そのものの受給要件や金額は、別記事で詳しく解説しています。あわせて読むと全体像がつかめます。

注意:併給できない主な組み合わせ

次の組み合わせは年齢にかかわらず併給できません。
・老齢基礎年金 と 障害厚生年金
・老齢厚生年金 と 障害厚生年金
・寡婦年金 と「遺族基礎年金・遺族厚生年金・特別支給の老齢厚生年金」
「基礎は別事由でも65歳以降ならOK」ですが、上記は例外的に組めない点に注意しましょう。

雇用保険・労災・傷病手当金との併給調整は?

併給調整は年金どうしだけでなく、他制度との間でも行われます。代表的なものを要点だけ押さえておきましょう。

雇用保険(失業給付・高年齢雇用継続給付)との調整

65歳になるまでの老齢年金(特別支給の老齢厚生年金など)と、雇用保険の失業給付(基本手当)は同時に受け取れません。基本手当を受けている間は、特別支給の老齢厚生年金が全額支給停止になります。

また、特別支給の老齢厚生年金と高年齢雇用継続給付を同時に受ける場合は、在職老齢年金額の一部が支給停止されます。

なお、給与と老齢厚生年金の調整(在職老齢年金)はこれとは別のしくみで、2026年4月から支給停止の基準額が月62万円に引き上げられました。詳しくは別記事で解説しています。

労災・傷病手当金との調整

労災保険の障害補償年金などを受け取る場合、障害厚生年金などの公的年金は全額受け取れますが、労災側が所定の調整率で減額されます。健康保険の傷病手当金も、同じ病気・ケガで障害年金が出るときは調整(傷病手当金が減額・不支給)の対象になります。

FP1級の視点

他制度との調整は、いずれも「同じ目的の給付の重複を避ける」という一貫した発想です。細部はケースで変わるため、複数の受給権が重なりそうなときは、自己判断せず年金事務所やハローワークで確認するのが確実です。

まとめ:FP1級が教える併給調整の覚え方

  • 併給調整は「一人一年金」が原則。複数の受給権があれば原則1つを選択し、ほかは支給停止
  • 同じ支給事由の「基礎+厚生」(老齢どうし・障害どうし・遺族どうし)は両方もらえる
  • 事由が違う組み合わせは原則どちらか一方。ただし65歳以降は一部が併給可(△)
  • 65歳以上の老齢厚生年金と遺族厚生年金は「差額支給」。自分の老齢厚生が優先される
  • 雇用保険・労災・傷病手当金とも調整あり。「同じ目的の二重取りはさせない」が共通の発想

覚え方の核は「同じ理由なら○、違う理由は原則×、65歳以降に一部△」の3パターンだけ。ここを起点に、自分の世帯に当てはめて「いくら受け取れるか」を把握し、足りない分だけを民間保険などで備える——これが当ブログの基本スタンスです。

FP1級の視点

私自身も、公的年金で「実際にいくら入るか」を起点に家計を設計しています。併給調整を理解すると、ねんきん定期便の数字を足し算するだけでは見えない”本当の受取額”がつかめ、過不足のない備えにつながります。

よくある質問(FAQ)

遺族厚生年金と老齢厚生年金は両方もらえますか?

65歳以上では「差額支給」で調整されます。まず自分の老齢厚生年金が全額支給され、遺族厚生年金の額がそれを上回る場合に、差額分だけが遺族厚生年金として支給されます。老齢厚生年金のほうが多ければ、遺族厚生年金は支給されないこともあります。

失業給付(雇用保険)と年金は同時にもらえますか?

65歳になるまでの老齢年金(特別支給の老齢厚生年金など)と失業給付(基本手当)は同時に受け取れません。基本手当を受けている間、特別支給の老齢厚生年金は全額支給停止になります。受け取り方の順番で有利・不利が変わるため、ハローワークや年金事務所での確認がおすすめです。

併給調整のわかりやすい覚え方はありますか?

「同じ理由なら○・違う理由は原則×・65歳以降に一部△」の3パターンで覚えるのが近道です。同じ支給事由の基礎+厚生(老齢どうしなど)は必ず両方もらえ、事由が違う組み合わせは原則どちらか一方、65歳以降に限り老齢基礎+遺族厚生などの例外が認められる、と整理できます。

併給調整は、老齢・障害・遺族の各年金を理解したうえで「どう組み合わさるか」を見るとスッキリします。各年金の中身は、年金カテゴリのほかの記事もあわせてどうぞ。

参考・出典
  • 日本年金機構「年金の併給または選択」
  • 厚生労働省「令和8年4月施行の在職老齢年金制度の見直しについて」
  • ※本記事は2026年(令和8年度)時点の情報です。制度・金額は改定される場合があります。個別のケースは年金事務所等でご確認ください。
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