「給与明細や源泉徴収票を見ても、“課税方法”なんて意識したことがない」
——そんな方がほとんどです。でも、投資や副業を始めると「総合課税」「分離課税」という言葉が急に身近になります。
この記事では、FP1級技能士が2026年(令和8年度)時点のルールにもとづいて、2つの課税方法の違いを会社員・初心者向けにやさしく整理します。
読み終えるころには、自分の所得がどちらで課税されるのかがスッキリ分かります。
所得税は原則、すべての所得を合算して計算する「総合課税」。ただし株の売却益や退職金など一部は「分離課税」で別々に計算します。会社員は給与=総合課税が基本で、投資を始めると分離課税が関わってきます。
総合課税と分離課税とは?違いを一言で
所得税の課税方法には「総合課税」と「分離課税」の2つがあります。総合課税とは、給与・事業・不動産などの所得をすべて合算し、その合計に税率をかける方法です。所得が多いほど税率が上がる「累進課税(5〜45%の7段階)」が適用されます。
一方、分離課税は特定の所得を他の所得と合算せず、別の税率で計算する方法です。所得税は総合課税が原則で、分離課税は例外的な扱いと覚えておきましょう。そもそも所得は10種類に分かれており、その前提は次の記事で解説しています。

所得税は原則「総合課税」。例外的に一部だけ「分離課税」になり、それはさらに申告分離課税(自分で申告)と源泉分離課税(天引きで完了)の2つに分かれます。
| 課税方法 | 計算のしかた | 税率 | 代表的な所得 |
|---|---|---|---|
| 総合課税 | 各所得を合算して計算 | 累進課税 5〜45% | 給与・事業・不動産 など |
| 分離課税 | 他の所得と分けて計算 | 所得ごとに一定 | 株の譲渡益・退職金・利子 など |

分離課税の2種類「申告分離課税」と「源泉分離課税」の違いは?
分離課税は、確定申告が必要かどうかで「申告分離課税」と「源泉分離課税」の2つに分かれます。
申告分離課税とは?
自分で確定申告をして納める分離課税です。株式・投資信託の売却益(譲渡所得)、不動産の譲渡所得、退職所得、山林所得などが対象。税率は所得の大きさに関係なく一定で、上場株式等の譲渡益なら20.315%(所得税・復興特別所得税15.315%+住民税5%)です。
源泉分離課税とは?
受け取るときに税金が天引き(源泉徴収)され、その時点で納税が完了する方法です。確定申告は不要。代表例は預貯金の利子で、利息を受け取る前にあらかじめ約20%が差し引かれています。

申告分離課税は自分で確定申告して納めるタイプ(株の譲渡益・退職金など)。源泉分離課税は受取時に天引きで完了し申告不要のタイプ(預貯金の利子など)です。
| 種類 | 確定申告 | 納め方 | 代表例 |
|---|---|---|---|
| 申告分離課税 | 必要 | 自分で申告して納付 | 株・投資信託の譲渡益、不動産の譲渡益、退職所得、山林所得 |
| 源泉分離課税 | 不要 | 受取時に天引きで完了 | 預貯金の利子 |
会社員の所得は総合課税?分離課税?自分に当てはめる
「結局、自分はどっち?」を会社員の代表的な所得で確認しましょう。給与は総合課税、退職金は申告分離課税、預金の利子は源泉分離課税です。投資をする人が迷いやすいのが配当ですが、上場株式の配当は総合課税・申告分離課税・申告不要から選べます。NISA口座での利益は、そもそも非課税なので課税方法を考える必要がありません。
なお総合課税には、医療費控除や生命保険料控除などの所得控除を差し引けるメリットがあります。控除の仕組みは次の記事でくわしく解説しています。

給与は総合課税、預金利子は源泉分離課税、退職金は申告分離課税。NISAは非課税で対象外です。特定口座の上場株式の配当だけが、3つの課税方法から選べます。
| 会社員の所得 | 課税方法 |
|---|---|
| 給与 | 総合課税 |
| 退職金 | 申告分離課税 |
| 預貯金の利子 | 源泉分離課税 |
| 上場株式の配当 | 総合・申告分離・申告不要から選べる |
| NISAの利益 | 非課税(対象外) |

配当をどの課税方法にするかは「課税所得900万円」が目安。これより低い人は総合課税を選ぶと配当控除が使え、源泉徴収の税率より有利になる場合があります。ただし配当を申告すると合計所得に算入され、社会保険料や扶養の判定に影響することもあるため、総合的に判断しましょう。
【2026年確認】配当の課税方法は所得税と住民税で同じになった
かつては、上場株式の配当について「所得税は総合課税、住民税は申告不要」というように、所得税と住民税で別々の課税方法を選ぶことができました。
しかし令和4年度税制改正により、令和6年度(令和5年分)からこの取り扱いは廃止され、所得税と住民税の課税方法は一致させることになりました。確定申告で選んだ課税方法が、そのまま住民税にも適用されます。
古い記事には「住民税だけ申告不要にすればお得」と書かれていることがありますが、これは現在は使えません。配当を確定申告すると住民税にも反映され、国民健康保険料や扶養の判定に影響する場合があります。2024年以降の情報かどうかを必ず確認しましょう。
非課税所得に確定申告は必要?…ではなく、課税方法の確認方法
自分の所得がどの課税方法かは、給与なら源泉徴収票、配当や株なら証券会社の「特定口座年間取引報告書」で確認できます。源泉徴収ありの特定口座なら、受け取り時に20.315%が天引きされ申告不要の状態です。迷ったときは国税庁のタックスアンサーや税務署で確認すると安心です。
参考・出典
国税庁「No.2220 総合課税制度」
「No.2240 申告分離課税制度」
「No.2230 源泉分離課税制度」
「No.1330 配当金を受け取ったとき(配当所得)」
総務省「上場株式等の配当所得等に係る課税方式の選択」
FP1級技能士試験対策テキスト
※本記事は2026年(令和8年度)時点の情報です。税制は改正されるため、最新情報は国税庁の公表をご確認ください。
よくある質問(総合課税と分離課税FAQ)
- 総合課税と分離課税はどちらが得ですか?
-
一概には言えません。給与など多くの所得は自動的に総合課税です。選べるのは上場株式の配当などに限られ、課税所得が低い人は総合課税で配当控除を使うと有利になりやすく、所得が高い人は税率が一定の申告分離課税が有利になりやすいです。
- 自分の配当がどの課税方法か確認するには?
-
証券会社の「特定口座年間取引報告書」や取引画面で確認できます。源泉徴収ありの特定口座なら、受け取り時に20.315%が天引きされ申告不要の状態です。確定申告で総合課税や申告分離課税を選び直すこともできます。
- NISAの利益は総合課税ですか分離課税ですか?
-
どちらでもありません。NISA口座内の配当や売却益は非課税のため、課税方法を考える必要がなく、確定申告も不要です。
まとめ:「合算か・分けるか」で課税方法が見える
- 所得税は原則「総合課税」、一部だけ「分離課税」
- 分離課税は「申告分離課税」と「源泉分離課税」の2種類
- 会社員は給与=総合課税、退職金=申告分離、利子=源泉分離
- 2026年現在、配当の課税方法は所得税と住民税で一致させる
課税方法が分かったら、次は所得税が実際にどう計算されるのか、全体の流れを押さえておくと理解が一気に深まります。



