「子どもが18歳になったら、遺族基礎年金が打ち切られて家計はどうなるの?」
その不安に応えるのが、遺族厚生年金に上乗せされる中高齢寡婦加算(ちゅうこうれいかふかさん)です。
子の18歳到達で生じる”収入の谷間”を、妻自身の年金が始まる65歳まで埋めてくれる、いわばブリッジ給付。
この記事では、2026年度(令和8年度)の最新額をもとに「誰が・いくら・いつまで」もらえるのか、そして2028年4月から始まる段階的縮小まで、FP1級の視点で図解します。
中高齢寡婦加算は、40歳以上65歳未満の「子のない妻」(または子が18歳年度末を過ぎた妻)の遺族厚生年金に上乗せされる加算です。2026年度の金額は年額635,500円。ただし2028年4月以降の新規受給分から、25年かけて段階的に縮小・廃止されます。
さやか遺族基礎年金は「子が18歳になったら終わり」でしたよね。そのあと、妻の生活はどうなるんですか?



いい質問!実はそこに”谷間”ができるんです。その谷間を65歳まで埋めるのが中高齢寡婦加算。まずは全体の流れを図で見てみましょう。
中高齢寡婦加算とは?読み方と制度の目的
中高齢寡婦加算は「ちゅうこうれいかふかさん」と読みます。夫を亡くした妻の遺族厚生年金に上乗せされる加算給付で、厚生年金(2階部分)の制度です。
会社員・公務員世帯の遺族保障については、前回の遺族厚生年金の記事で全体像を解説しています。


「子の18歳」と「妻の65歳」の谷間を埋めるブリッジ給付
子のある妻は、子が18歳到達年度末を迎えると遺族基礎年金が打ち切られます。一方、妻自身の老齢基礎年金が始まるのは65歳。この間の収入の谷間をつなぐのが中高齢寡婦加算の役割です。


子が18歳到達年度末になると遺族基礎年金は終了します。そこから妻が65歳になるまでの間、中高齢寡婦加算が遺族厚生年金に上乗せされ、65歳以降は妻自身の老齢基礎年金へバトンタッチします。
遺族保障は「単発の給付」ではなく「リレー」で見るのがコツです。遺族基礎年金→中高齢寡婦加算→老齢基礎年金と、どの帯がいつ切り替わるかを押さえると、わが家の収入カーブが具体的に描けます。
誰がもらえる?受給の条件は?
対象は妻のみです。次のどちらかに当てはまる妻に、65歳になるまで加算されます。
①夫の死亡時に40歳以上65歳未満で、子のいない妻
②40歳到達時に子と生計を同じくしていた妻が、子の18歳年度末到達などで遺族基礎年金を受け取れなくなったとき


判定の軸は3つ。「妻であること」「40歳以上65歳未満(または40歳時点で子のある妻)」「長期要件なら夫の厚生年金加入20年以上」です。遺族基礎年金を受けている間は支給停止になります。
長期要件は「夫の厚生年金20年(240月)以上」が必要
見落としやすいのがここです。夫が在職中に亡くなった場合(短期要件)は加入月数を問いませんが、老齢厚生年金の受給権者などが亡くなった場合(長期要件)は、厚生年金の加入期間が240月(20年)以上ないと加算されません。
| 夫の死亡パターン | 要件区分 | 厚生年金の加入月数 |
|---|---|---|
| 在職中(被保険者)に死亡など | 短期要件 | 月数は問わない |
| 老齢厚生年金の受給権者などが死亡 | 長期要件 | 240月(20年)以上が必要 |
もらえないケースは?
次の場合は対象外です。
・夫(男性)は受け取れない(妻限定の制度)
・夫死亡時に40歳未満で子のいない妻
・夫が自営業(国民年金のみ)だった場合
・長期要件で夫の厚生年金加入が20年未満
また、遺族基礎年金を受け取っている間は支給停止となり、二重には受け取れません。
「夫が厚生年金に20年入っていたか」は、ねんきん定期便の加入月数欄で確認できます。転職や独立で厚生年金期間が20年弱の方は、この加算の有無で老後前の収入が年60万円以上変わる可能性があります。


いくらもらえる?2026年度の金額



仕組みはわかったけど、実際いくら上乗せされるんです?金額次第で備え方も変わるでしょう。



2026年度は年635,500円。月にすると約5.3万円です。遺族基礎年金のほぼ4分の3と覚えると忘れません。
2026年度は年額635,500円(遺族基礎年金×4分の3)
中高齢寡婦加算の額は、遺族基礎年金の基本額×4分の3(100円単位)と定められています。2026年度(令和8年度)は遺族基礎年金847,300円をもとに、年額635,500円です。
| 項目 | 2026年度(令和8年度) |
|---|---|
| 中高齢寡婦加算(年額) | 635,500円 |
| 月額換算 | 約52,958円 |
| 計算根拠 | 遺族基礎年金847,300円×3/4(100円単位) |
| 支給期間 | 40歳(または遺族基礎年金失権時)〜65歳まで |
65歳になったら?経過的寡婦加算への切り替え
65歳になると中高齢寡婦加算は終了し、妻自身の老齢基礎年金に切り替わります。ただし昭和31年4月1日以前生まれの妻に限り、年金額の減少を補う「経過的寡婦加算」(2026年度は生年月日に応じて年21,147円〜633,700円)が上乗せされます。これより後に生まれた世代には付きません。
年63万円=月5万円強は、遺族厚生年金(報酬比例×3/4)と同水準かそれ以上になる世帯も多い、存在感のある加算です。私はこの「公的でいくら入るか」を先に固めてから、不足分だけを民間保険で備える設計をおすすめしています。
2028年4月から段階的に縮小・廃止へ
2025年6月に成立した年金制度改正法により、中高齢寡婦加算は2028年4月以降に新たに発生する分から、約25年かけて段階的に縮小・廃止されることが決まりました。女性の就労が一般化し、妻だけを対象とする男女差を解消するためです。


縮小の対象は2028年4月以降に新たに受給権が発生する分のみです。受給開始年度が遅いほど加算額が小さくなり、約25年かけてゼロに近づきます。すでに受給中の人は65歳まで現在の額のままです。
今もらっている人は影響なし
すでに加算を受けている妻と、施行前に受給を開始する妻は、65歳までこれまでどおりの額を受け取れます。一度決まった加算額が途中で減らされることもありません。あわてて何かをする必要はなく、「自分(や妻)が受給開始するのはいつ頃か」で影響を判断しましょう。
なお、同じ改正では遺族厚生年金本体も「配偶者は原則5年の有期給付」へと見直されます。改正全体の内容は遺族厚生年金の記事で詳しく解説しています。
「廃止」の見出しだけ見ると不安になりますが、実態は四半世紀かけた緩やかな縮小です。ただし方向性として”妻だから上乗せ”の時代は終わります。若い世代ほど、共働き+自助の備えを前提にライフプランを組むのが現実的です。
まとめ:谷間を埋める加算を知り、足りない分を備える
- 中高齢寡婦加算は、40歳以上65歳未満の子のない妻(子が18歳年度末を過ぎた妻を含む)の遺族厚生年金に上乗せされる
- 2026年度の金額は年635,500円(遺族基礎年金847,300円×3/4)
- 長期要件の場合、夫の厚生年金加入20年(240月)以上が必要。遺族基礎年金との二重取りは不可
- 2028年4月以降の新規受給分から約25年かけて段階的に縮小・廃止(受給中の人は影響なし)
中高齢寡婦加算は、子育て後の妻を65歳まで支える”谷間を埋めるブリッジ給付“です。まず公的制度でいくら守られるかを把握し、足りない分だけを民間保険などで補う
——これが当ブログの基本スタンスです。
私自身も、生活費6ヶ月分の生活防衛資金を確保したうえで、不足分を保険と資産形成でカバーしています。加算が縮小に向かう今こそ、「リレーのどの帯が細くなるか」を起点に必要保障額を見直す好機です。
遺族年金シリーズは本記事で3部作が完結です。1階の遺族基礎年金、2階の遺族厚生年金とあわせて読むと、わが家の遺族保障の全体像がつかめます。


よくある質問(FAQ)
- 妻を亡くした夫も中高齢寡婦加算をもらえますか?
-
もらえません。中高齢寡婦加算は妻のみを対象とする制度です。この男女差の解消も2028年改正で段階的縮小が決まった理由のひとつです。
- 中高齢寡婦加算をもらうのに特別な手続きは必要ですか?
-
原則不要です。遺族厚生年金の請求手続きをすれば、要件に該当する場合は自動的に加算されます。子の18歳年度末到達で遺族基礎年金から切り替わる際も、手続きなしで加算が始まります。
- 遺族基礎年金と中高齢寡婦加算は両方もらえますか?
-
両方同時には受け取れません。遺族基礎年金を受けている間、中高齢寡婦加算は支給停止になります。子の18歳年度末到達で遺族基礎年金が終了すると、入れ替わりで加算が始まる仕組みです。
遺族年金は、老齢年金・障害年金とあわせて理解することで、自分に本当に必要な備えが見えてきます。年金カテゴリのほかの記事もあわせてどうぞ。
- 日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)中高齢寡婦加算」
- 厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」「年金制度改正法(令和7年)」
- ※本記事は2026年(令和8年度)時点の情報です。年金額は毎年改定され、2028年改正の詳細は今後の政令等で変わる可能性があります。






