ぎゅうた株で損が出ちゃったんだけど、その損って税金で取り返せるって本当?「損益通算」って言葉、難しそうで手が止まってる…



損益通算は「赤字と黒字を相殺して、払いすぎた税金を減らす」仕組みです。実は“2つの世界”に分けて考えると一気にスッキリしますよ。FP1級の枠組みで、初心者向けに整理しますね。
株や不動産で損が出たとき、頼りになるのが損益通算です。ただ、ネットで調べると「富士山上」「申告分離」「NISAはできない」など言葉が入り乱れ、かえって混乱しがち。
この記事では1級FP技能士が、令和7・8年分(2026年提出)時点のルールにもとづいて、損益通算を「総合課税の世界」と「投資(申告分離)の世界」の2つに分けて、初心者向けにやさしく解説します。
損益通算は「総合課税(富士山上の4所得)」と「投資(申告分離)」の2つの世界に分かれます。NISAは利益も損失も「ないもの」とされるため、どちらの対象にもなりません。
損益通算とは?
一言でいうと「赤字と黒字の相殺」
損益通算とは、ある所得で出た損失(赤字)を、別の所得の利益(黒字)から差し引ける仕組みのことです。これにより税金の計算のもとになる総所得金額が小さくなり、所得税・住民税を軽くできます。
たとえば給与所得が500万円あり、副業の不動産経営で100万円の赤字が出たとします。損益通算をすれば、課税のもとは「500万円−100万円=400万円」に。払う税金がそのぶん減る、というイメージです。


損益通算とは「赤字の所得を黒字の所得から差し引くこと」。総所得金額が下がるため、所得税・住民税が軽くなります。ただしどんな赤字でも使えるわけではありません。



どんな赤字でも使えるわけじゃない…?じゃあ、使える赤字と使えない赤字があるってことか。
そのとおりです。まずは所得全体の地図を押さえると理解が早いので、所得の種類があやふやな方は先にこちらもどうぞ。


【世界①】総合課税の損益通算
できる所得は「富士山上」の4つだけ
所得は全部で10種類ありますが、赤字を他の所得と損益通算できるのは、原則として次の4つだけです。
不動産所得・事業所得・山林所得・譲渡所得。頭文字をとって「不・事・山・譲」、「富士山上(ふじさんじょう)」と覚えるのがFP試験での定番です。
| 区分 | 所得の例 | 損益通算 |
|---|---|---|
| 富士山上の4所得 | 不動産・事業・山林・譲渡(総合課税) | できる(原則) |
| 損失が出ても通算不可 | 配当・給与・一時・雑 | できない |
| そもそも損失が出ない | 利子・退職 | ― |
「富士山上」の4所得が原則です。


損益通算できるのは不動産・事業・山林・譲渡(=富士山上)の4つ。配当・給与・一時・雑は赤字でも通算できず、利子・退職はそもそも損失が出ません。
FPの試験でも「富士山上」は頻出の暗記項目です。特に不動産所得と譲渡所得は例外が多く、出題の中心になります(次の章で解説します)。実務でも、この4つ以外の赤字は基本的に切り捨て、と覚えておくと判断を間違えません。
4所得のうち、自分で商売をして得る事業所得については、こちらで詳しく解説しています。


損益通算できないケース
(初心者がつまずく例外)
「富士山上の4つ」でも、一部は損益通算の対象から外れます。特に不動産所得と譲渡所得に例外が集中しているので、ここだけ押さえておきましょう。
不動産所得:土地を買うための借入金の利子はNG
不動産所得の赤字のうち、土地を取得するための借入金の利子に相当する部分は損益通算できません。一方で、建物を取得するための借入金の利子は通算OKです。アパート購入などで土地と建物をまとめて借入れした場合は要注意のポイントです。
譲渡所得:通算できない譲渡損失が複数ある
譲渡所得の損失でも、次のものは他の所得と損益通算できません。
- 土地・建物(賃貸用など)の譲渡損失…ただし一定の要件を満たす自分のマイホーム(居住用財産)の譲渡損失は、特例で損益通算が可能です
- 生活に通常必要でない資産の譲渡損失…別荘、ゴルフ会員権、金地金、1個(1組)30万円超の貴金属・書画・骨董など
- 生活用動産(家具・衣類など)の譲渡損失…そもそも売却益が非課税のため、損失も通算できません
- 株式等の譲渡損失…総合課税の他の所得とは通算不可(※投資の世界での扱いは次章へ)
| 所得 | 通算できない損失 | 例外(できる) |
|---|---|---|
| 不動産所得 | 土地取得のための借入金利子 | 建物取得のための借入金利子 |
| 譲渡所得 | 土地・建物(賃貸用など)の譲渡損 | 一定のマイホームの譲渡損 |
| 譲渡所得 | 別荘・ゴルフ会員権・金地金などの譲渡損 | ― |
| 譲渡所得 | 生活用動産の譲渡損 | ―(売却益も非課税) |
これらの損失は通算の対象外です。


家具・衣類・通勤用の車などの生活用動産は、売って損が出ても損益通算できません。これらは売却益がそもそも非課税で、税金の世界では「損も益もない」扱いだからです。
【世界②】投資の損益通算
株・投信・配当は「申告分離」の中で相殺
ここからが多くの人がつまずく所です。株や投資信託、上場株式の配当金は、申告分離課税という別の世界で税金を計算します。世界①(富士山上)とは仕組みが違うので、分けて考えるのがコツです。
投資の世界での損益通算は、上場株式等の譲渡損失と、申告分離課税を選んだ上場株式等の配当所得・利子所得との間でできます。つまり「株で出た売却損」を「配当金や分配金」と相殺できる、というわけです。
株の譲渡損失は、給与所得や事業所得など「総合課税」の所得とは損益通算できません。世界①(富士山上)と世界②(投資)は、原則として行き来できない別々の箱だと覚えておきましょう。
口座の種類によって、損益通算が自動か・確定申告が必要かが変わります。
| 口座の種類 | 同じ口座内の通算 | 他口座・配当との通算 |
|---|---|---|
| 特定口座(源泉徴収あり) | 自動で通算 | 確定申告が必要 |
| 特定口座(源泉徴収なし) | 年間取引報告書で計算 | 確定申告が必要 |
| 一般口座 | 自分で計算 | 確定申告が必要 |
| NISA口座 | ― | 通算できない(次章) |
それ以外は確定申告が必要です。


株の譲渡損失は申告分離課税の配当・利子とのみ通算できます。給与など総合課税の所得とは通算不可。複数の証券会社の口座をまたぐ通算や、配当との通算には確定申告が必要です。
「総合課税」と「申告分離課税」の違いそのものは、こちらで詳しく解説しています。投資の損益通算を正しく理解するうえで土台になる記事です。


NISAは損益通算できない
なぜ“2つの世界”どちらからも外れるのか
NISA口座は非課税口座です。利益が出ても税金がかからない代わりに、損失が出ても税務上は「ないもの」として扱われます。損失そのものが存在しない扱いなので、特定口座や一般口座の利益と損益通算することはできません。
| 項目 | 課税口座(特定・一般) | NISA口座(非課税) |
|---|---|---|
| 利益 | 課税される | 非課税 |
| 損失の扱い | 損失として認められる | 「ないもの」とされる |
| 他口座との損益通算 | できる(要確定申告) | できない |
だから通算の対象外です。


NISA口座は利益が非課税の代わりに、損失も「ないもの」とされます。そのため、世界①(総合課税)とも世界②(投資の申告分離)とも通算できません。「非課税のメリットの裏返し」と理解しておきましょう。
【発展】損益通算の順序=3次通算
(試験で問われる枠組み)
初心者の方は、ここまでの「富士山上」「投資の申告分離」「NISAは対象外」の3点が分かれば十分です。この章は、FP試験対策や正確に計算したい方向けの発展内容です。
赤字が複数の所得にまたがる場合、損益通算には決まった順序があります。所得を次の2グループに分け、グループ内→グループ間→山林・退職の順に通算します。これを3次通算と呼びます。
- 経常所得グループ…利子・配当・不動産・事業・給与・雑
- 譲渡・一時所得グループ…譲渡・一時
- 第1次通算…各グループの内側で通算
- 第2次通算…2つのグループ間で通算
- 第3次通算…残った損失を山林所得→退職所得の順で通算


一時所得と総合課税の長期譲渡所得は、最終的に2分の1にして所得に算入します。損益通算は2分の1する前の金額で行い、通算後に2分の1を掛けます。順番を間違えると金額がずれるので注意しましょう。
具体例で流れを確認します(FP1級テキストの計算例より)。各所得が次のとき、損益通算後の所得金額は…
| ステップ | 計算 |
|---|---|
| 前提 | 不動産150万円/事業▲200万円/一時250万円/山林▲50万円 |
| 第1次(経常) | 150万円−200万円=▲50万円 |
| 第2次(グループ間) | 250万円−50万円=200万円(一時所得) |
| 第3次(山林) | 200万円−50万円=150万円(一時所得) |
| 所得金額 | 150万円 × 1/2 = 75万円 |
順序を守ると正しく75万円になります。
まとめ:損益通算の基本4ポイント
- 損益通算=赤字と黒字の相殺。総所得が下がり、所得税・住民税が軽くなる
- 【世界①】総合課税で通算できるのは「富士山上」の4所得(不動産・事業・山林・譲渡)だけ
- 【世界②】株・投信・配当は申告分離の中で通算。給与など総合課税の所得とは通算できない
- NISAは損失が「ないもの」とされ、課税口座の利益と損益通算できない



「総合課税の世界」「投資の世界」「NISAは別」の3点が分かれば、損益通算はもう怖くありません。次回は、その年に引ききれなかった損失を翌年以降に持ち越す繰越控除を解説します。
よくある質問(損益通算FAQ)
- 損益通算はサラリーマンでも使えますか?
-
はい。給与所得者でも、不動産経営や事業(副業が事業所得に該当する場合)などで赤字が出れば、確定申告をすることで給与所得と損益通算できます。会社の年末調整では通算できないため、自分で確定申告をする必要があります。
- NISAの損失は損益通算できますか?
-
できません。NISA口座は非課税口座で、損失は税務上「ないもの」とされます。そのため、NISAで損が出ても、特定口座や一般口座の利益と相殺することはできません。
- 株の損失は給与所得と損益通算できますか?
-
できません。上場株式等の譲渡損失は、申告分離課税を選んだ配当所得・利子所得とのみ通算できます。給与所得や事業所得など「総合課税」の所得とは通算できないため、別々の箱として理解しておきましょう。
【出典】
・国税庁「No.2250 損益通算」
・国税庁「No.1391 不動産所得が赤字のときの他の所得との通算」
・国税庁「上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除」
・金融庁/各証券会社(NISA口座の損益通算・非課税の取扱い)
・FP1級学習教材(損益通算の対象・損益通算の順序・計算例)
※本記事は令和7・8年分(2026年提出)時点の情報に基づきます。個別の判断は最新の国税庁情報や税務署・税理士にご確認ください。









