給付基礎日額とは?労災の金額の土台をFPがわかりやすく解説

ぎゅうた

「休業補償とか障害補償年金の金額が『給付基礎日額の◯日分』って書いてあったけど…そもそも給付基礎日額って何?どうやって決まるの?」

みる

「いい質問です!給付基礎日額は、労災のいろんな給付の金額を計算する”土台”になる『1日あたりの賃金額』なんです。今日はその決まり方から、最低保障額まで解説しますね」

給付基礎日額は、労災保険の休業(補償)給付・傷病補償年金・障害補償給付などの金額を計算する基礎になる「1日あたりの賃金額」です。これまで解説してきた各給付の、いわば「金額の土台」にあたります。

この記事では、1級FP技能士の視点で「給付基礎日額の計算方法」「最低保障額・スライド制」「一人親方など特別加入者の決め方」を、初心者向けにやさしく解説します。

この記事の結論

給付基礎日額は、原則として労働基準法の「平均賃金」に相当する額で、算定事由発生日以前3か月間の賃金総額 ÷ その期間の総日数で計算します。賞与などの特別給与は含まず、それらは別に「算定基礎日額」として扱います。金額が極端に低い場合は最低保障額(自動変更対象額。令和7年8月改定で4,250円)が保障され、賃金水準の変動に応じてスライド制で改定されます。一人親方などの特別加入者は、3,500円〜25,000円の範囲から自分で選びます。

目次

給付基礎日額とは?労災給付の”土台”になる金額

給付基礎日額とは、労災保険の各種給付の額を計算するときの「1日あたりの単価」です。原則として、労働基準法第12条の平均賃金に相当する額とされています。

労災保険には、療養(補償)給付・休業(補償)給付・傷病補償年金・障害(補償)給付・遺族(補償)給付・葬祭料など、たくさんの給付があります。このうち金額が「◯日分」で決まる給付は、すべて給付基礎日額をもとに計算されます。たとえば休業(補償)給付は「給付基礎日額の60%(+特別支給金20%)」、障害補償年金や傷病補償年金は「給付基礎日額の◯日分」という形です。

給付基礎日額が休業補償・傷病補償年金・障害補償給付など各給付の計算の土台になることを示した図解
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給付の例給付基礎日額をどう使うか
休業(補償)給付給付基礎日額の60%(+休業特別支給金20%)
傷病補償年金給付基礎日額の245〜313日分(等級による)
障害補償年金給付基礎日額の131〜313日分(等級による)
遺族補償年金給付基礎日額の153〜245日分(人数による)
主な給付と給付基礎日額の関係(概要)
上の図・表のポイント

給付基礎日額は、労災給付の「共通の計算の土台」です。これまで解説してきた休業補償・傷病補償年金・障害補償給付などの金額は、すべてこの給付基礎日額をベースに決まります。つまり給付基礎日額が高いほど、各給付の金額も大きくなります。まずは労災保険全体の仕組みを、下の記事で確認しておきましょう。

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給付基礎日額はどうやって計算する?計算式をFPが解説

給付基礎日額は、原則として次の計算式で求めます。FPの試験対策テキストでも、給付基礎日額は「算定事由発生日以前3か月間の賃金の総額 ÷ その期間の総日数」と整理されています。

給付基礎日額の計算式(算定事由発生日以前3か月間の賃金総額を3か月間の総日数で割る)を示した図解
給付基礎日額の計算式

給付基礎日額 = 算定事由発生日以前3か月間の賃金の総額 ÷ その3か月間の総日数

※「算定事由発生日」=ケガや病気の原因となった事故が起きた日など。
※賞与や臨時に支払われる賃金は、この「賃金の総額」に含めません。
※1円未満の端数は切り上げます。
※2か所以上で働く複数事業労働者は、勤務先ごとに計算した額を合計します。

具体的にイメージしてみましょう。直前3か月の賃金総額が90万円、その3か月の暦の総日数が92日なら、90万円 ÷ 92日 = 約9,783円が給付基礎日額になります(1円未満切り上げ)。ここでいう「賃金」は、基本給・残業代・通勤手当などの合計で、賞与(ボーナス)は含みません

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項目取り扱い
基本給・残業代・各種手当賃金総額に含める
賞与(ボーナス)・臨時の賃金賃金総額に含めない(→算定基礎日額で別に扱う)
複数事業労働者(2か所以上勤務)勤務先ごとに計算した額を合計
給付基礎日額の計算に含めるもの・含めないもの

なお、賞与など「特別給与」は、給付基礎日額とは別の算定基礎日額として、特別支給金(障害特別年金・遺族特別年金など)の計算に使われます。算定基礎日額は「算定事由発生日以前1年間の特別給与の総額(算定基礎年額)÷ 365」で求めるのが原則です。ふだんの賃金は給付基礎日額、ボーナスは算定基礎日額、と覚えておくと整理しやすいです。

上の図・表のポイント

給付基礎日額は「直前3か月の給料の平均日額」とイメージすればOKです。ポイントは、ボーナスを含めないこと。ボーナス分は別枠の算定基礎日額として、特別支給金の計算に回ります。会社員として働く方は、給料明細の3か月分がベースになる、と押さえておきましょう。

ぎゅうた

「なるほど!ふだんの給料は給付基礎日額、ボーナスは算定基礎日額で別々に計算するんだね。ボーナスも無視されるわけじゃなくて安心した!」

最低保障額・スライド制・年齢階層別限度額とは?

給付基礎日額には、被災した労働者の生活を守るための調整の仕組みがあります。おさえておきたいのは「最低保障額」「スライド制」「年齢階層別の最低・最高限度額」の3つです。

まず最低保障額(自動変更対象額)です。計算した給付基礎日額が極端に低くなった場合でも、一定額は保障されます。この額は毎年8月1日に改定され、令和7年8月改定で4,250円です(令和8年7月31日まで適用。8月1日にあらためて改定されるため、請求時は最新額を確認しましょう)。

次にスライド制です。労災の療養が長引くと、被災した当時の賃金のままでは物価や賃金水準の変化に追いつきません。そこで、賃金水準の変動に応じて給付基礎日額を改定するのがスライド制です。とくに年金として支給される給付では、この仕組みが重要になります。

さらに、年金給付や長期の休業給付には年齢階層別の最低・最高限度額が設けられています。年齢に応じて「これ以上は下げない/これ以上は上げない」という枠を設ける仕組みで、こちらも毎年8月1日に改定されます。

給付基礎日額の調整のしくみ(最低保障額・スライド制・年齢階層別の最低最高限度額)を示した図解
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調整のしくみ内容
最低保障額(自動変更対象額)4,250円(令和7年8月改定・毎年8月1日改定)
年齢階層別の最低・最高限度額
(例:25〜29歳)
最低6,634円/最高15,625円(令和7年8月改定の例)
スライド制賃金水準の変動に応じて給付基礎日額を改定
給付基礎日額の調整のしくみ
※金額は令和7年8月改定。毎年8月1日に改定されるため最新額は要確認

もう1つ知っておきたいのが、「休業給付基礎日額」と「年金給付基礎日額」という呼び分けです。使われる給付によって、適用される調整が少し変わります。

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種類主に使われる給付年齢階層別限度額
休業給付基礎日額休業(補償)給付療養開始後1年6か月を経過した後に適用
年金給付基礎日額傷病補償年金・障害補償年金・遺族補償年金適用あり
休業給付基礎日額と年金給付基礎日額の違い
上の図・表のポイント

給付基礎日額は「計算して終わり」ではなく、最低保障額・スライド制・年齢階層別限度額で調整されます。短期の休業補償はシンプルですが、傷病補償年金や障害補償年金のように長く続く年金では、スライド制と年齢階層別限度額が効いてきます。前回までに解説した各年金の記事も、あわせて確認してみてください。

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一人親方など特別加入者の給付基礎日額はどう決まる?

ここまでは会社に雇われて働く労働者の話でした。一方、一人親方や中小事業主などの特別加入者は、実際の賃金がないため、給付基礎日額を自分で選んで決めます

特別加入者は、3,500円〜25,000円の範囲(複数の区分)から希望額を選び、特別加入団体を通じて申し込むと、労働局長が決定します。給付基礎日額が高いほど補償は手厚くなりますが、そのぶん保険料も上がります。特別加入の保険料は「給付基礎日額 × 365日 × 保険料率」で計算されるため、収入とのバランスで選ぶのがポイントです。

特別加入者のポイント

労働者は「実際の賃金から計算」、特別加入者は「希望額から選択」——ここが大きな違いです。副業として個人事業を行い特別加入している場合、勤め先の労働者としての補償と、特別加入の補償の両方を受けられるケースもあります。自分がどちらの立場かで、給付基礎日額の決まり方が変わる点を押さえましょう。

給付基礎日額のよくある質問(FAQ)

給付基礎日額に賞与(ボーナス)は含まれますか?

含まれません。給付基礎日額は、直前3か月間の賃金(基本給・残業代・各種手当など)から計算し、賞与や臨時に支払われる賃金は含めません。賞与などの特別給与は、別枠の「算定基礎日額」として、障害特別年金・遺族特別年金などの特別支給金の計算に使われます。

計算した給付基礎日額が極端に低い場合はどうなりますか?

最低保障額(自動変更対象額)が適用されます。計算結果がこの額を下回る場合は、最低保障額まで引き上げられます。金額は毎年8月1日に改定され、令和7年8月改定では4,250円です。長期の年金給付などでは、さらに年齢階層別の最低限度額やスライド制による調整も行われます。

一人親方など特別加入者の給付基礎日額はどう決まりますか?

特別加入者は実際の賃金がないため、3,500円〜25,000円の範囲から希望する給付基礎日額を選び、労働局長が決定します。日額が高いほど補償は手厚くなりますが保険料も上がり、保険料は「給付基礎日額×365日×保険料率」で計算されます。収入に見合った額を選ぶのがポイントです。

まとめ

  • 給付基礎日額は、労災給付の金額を計算する”土台”になる1日あたりの賃金額(原則、労基法の平均賃金)
  • 計算式は「算定事由発生日以前3か月間の賃金総額 ÷ その総日数」。賞与は含めず算定基礎日額で別扱い
  • 最低保障額(令和7年8月改定4,250円)・スライド制・年齢階層別限度額で調整される
  • 一人親方など特別加入者は3,500円〜25,000円から希望額を選び、保険料もその額で決まる

給付基礎日額は、休業補償・傷病補償年金・障害補償給付など、労災のあらゆる給付額を左右する大切な基準です。「ふだんの給料の直前3か月分がベース」「ボーナスは別枠」「毎年8月に金額が見直される」という3点を押さえておきましょう。実際の金額や請求方法は、勤務先を管轄する労働基準監督署に相談してください。

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【出典】厚生労働省「労災年金給付等に係るスライド率等について」(給付基礎日額の自動変更対象額・年齢階層別最低最高限度額)/労働者災害補償保険法第8条・第8条の2〜第8条の4/労働基準法第12条(平均賃金)/厚生労働省「特別加入制度のしおり」

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