ぎゅうた「雇用保険料って、会社のほうが多く払ってるんだよね。あの上乗せ分って何に使われてるの?”雇用保険二事業”って聞いたけど、よくわからなくて…」



「いい着眼点です。あの上乗せ分が雇用保険二事業の財源。雇用調整助成金やキャリアアップ助成金など、会社向けの助成金の原資になっているんですよ。だから事業主だけが負担するんです」
雇用保険二事業とは、失業の予防や労働者の能力開発を目的として国が行う事業のことです。雇用安定事業と能力開発事業の2つを指します。
失業等給付が「労働者への給付」なのに対し、二事業は主に事業主への助成。この記事では1級FP技能士の視点で、2つの事業の内容・保険料の負担・代表的な助成金をやさしく解説します。


雇用保険二事業は①雇用安定事業②能力開発事業の2つ。失業等給付・育児休業給付の保険料が労使折半なのに対し、二事業の保険料は全額が事業主負担で、労働者の負担はありません。料率は一般の事業で3.5/1000(建設の事業は4.5/1000)。雇用調整助成金やキャリアアップ助成金など、事業主向け助成金の財源になっています。
雇用保険二事業とは?2つの事業の内容
雇用保険の給付というと失業手当(基本手当)を思い浮かべますが、雇用保険には「失業してから助ける」だけでなく「失業させないようにする」役割もあります。それが雇用保険二事業です。


| 事業 | 目的 | 主な内容 |
|---|---|---|
| 雇用安定事業 | 失業の予防、雇用状態の是正、 雇用機会の増大その他雇用の安定 | 雇用調整助成金、キャリアアップ助成金、 高年齢者・障害者の雇用促進への助成など |
| 能力開発事業 | 職業生活の全期間を通じた 労働者の能力の開発・向上 | 公共職業能力開発施設の設置・運営、 人材開発支援助成金、技能検定の実施など |
※事業の一部は独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が行います
覚え方はシンプルで、「雇用を守る」のが雇用安定事業、「スキルを伸ばす」のが能力開発事業。雇用調整助成金は雇用を維持するための助成なので雇用安定事業、人材開発支援助成金は訓練への助成なので能力開発事業、と目的で振り分けると迷いません。かつては「雇用福祉事業」を含めた三事業でしたが、現在は二事業になっています。
保険料は誰が負担する?全額事業主負担のワケ
雇用保険料のなかで、二事業に係る分は全額が事業主負担です。労働者の給与から差し引かれることはありません。


| 区分 | 保険料の負担 | 料率(一般の事業) |
|---|---|---|
| 失業等給付 | 労働者と事業主で労使折半 | 労使それぞれ一定率 |
| 育児休業給付 | 労働者と事業主で労使折半 | 労使それぞれ一定率 |
| 雇用保険二事業 | 全額 事業主負担 | 3.5/1000 (建設の事業は4.5/1000) |
※料率は年度ごとに改定されるため、最新の料率は厚生労働省の案内をご確認ください
なぜ事業主だけが負担するのでしょうか。理由は二事業の恩恵を受けるのが主に事業主だからです。
リストラや雇用の問題は企業活動に起因することが多く、それを解決する事業は事業主に利益をもたらします。また助成金を受け取るのも事業主本人。「受益者が負担する」という考え方で設計されているわけです。なお、二事業には国庫負担もありません。
給与明細に載る「雇用保険」は労働者負担分だけなので、二事業分は目に見えません。でも会社は、あなたの給与に対してこの3.5/1000を上乗せで負担しています。事業主にとっては単なるコストではなく、助成金として戻ってくる可能性のある投資でもある——そう捉えると、雇用保険料の見え方が変わってきます。人を雇う立場になったときにも効いてくる知識です。



「なるほど、助成金をもらうのは会社だから会社が払う、ってことか。スッキリした!」
どんな助成金がある?代表的な例
二事業を財源とする助成金は数多くありますが、代表的なものを挙げます。
| 助成金 | どんなとき | 区分 |
|---|---|---|
| 雇用調整助成金 | 経済上の理由で事業活動の縮小を余儀なくされ、 休業・教育訓練・出向で雇用を維持したとき | 雇用安定事業 |
| キャリアアップ助成金 | 有期雇用労働者を正社員化するなど 処遇改善に取り組んだとき | 雇用安定事業 |
| 人材開発支援助成金 | 従業員に職業訓練を受けさせたとき | 能力開発事業 |
| 両立支援等助成金 | 育児・介護と仕事の両立支援に 取り組んだとき | 雇用安定事業 |
※要件や支給額は変更されることがあります。最新情報は厚生労働省サイトでご確認ください
これらの助成金を受けるには、労働保険料を滞納していないことなど共通の要件があります。申請窓口は労働局やハローワークです。
なお、労働者が受け取る教育訓練給付とは財源が別である点に注意しましょう。教育訓練給付は失業等給付の一部で、労使折半の保険料が財源です。
雇用保険二事業|よくある質問(FAQ)
- 雇用保険二事業の保険料は労働者も負担しますか?
-
負担しません。雇用保険二事業に係る保険料は全額が事業主負担で、労働者の給与から差し引かれることはありません。失業等給付と育児休業給付に係る保険料は労使折半ですが、二事業分だけは事業主のみが負担します。そのため、雇用保険料は労働者と事業主で「きっちり折半」にはならず、事業主の負担のほうが大きくなります。
- 雇用安定事業と能力開発事業の違いは何ですか?
-
目的が異なります。雇用安定事業は失業の予防や雇用機会の増大など「雇用そのものを守る」ための事業で、雇用調整助成金やキャリアアップ助成金が代表例です。一方の能力開発事業は労働者の「能力を開発・向上させる」ための事業で、公共職業能力開発施設の運営や人材開発支援助成金などが含まれます。助成金がどちらに該当するかは、その目的で判断すると整理しやすくなります。
- 個人事業主も雇用保険二事業の保険料を払いますか?
-
労働者を1人でも雇っていれば、事業主として雇用保険料(二事業分を含む)を納めることになります。一方、従業員を雇わず1人で事業を営んでいる場合は雇用保険の適用事業にあたらないため、納付は生じません。なお、助成金を受けられるのは労働者を雇用する事業主なので、負担と受益は対応した関係になっています。
まとめ
- 雇用保険二事業は「雇用安定事業」と「能力開発事業」の2つ。失業を防ぎ、能力を高めるための事業
- 保険料は全額が事業主負担。労働者の負担も国庫負担もない
- 料率は一般の事業で3.5/1000(建設の事業は4.5/1000)
- 雇用調整助成金・キャリアアップ助成金・人材開発支援助成金などの財源になっている
雇用保険二事業は、給与明細には出てこない”見えない仕組み”ですが、働く環境を支える大切な土台です。「二事業=雇用安定+能力開発」「全額事業主負担」「助成金の財源」の3点を押さえておけば、雇用保険の全体像がぐっとクリアになります。事業主の方は、自社が使える助成金がないか一度確認してみましょう。
▼ 雇用保険の保険料と被保険者はこちら


▼ 保険・社会保障の記事一覧はこちら
【出典】厚生労働省「雇用保険制度の概要」「財政運営(失業等給付・雇用保険二事業)について」(職業安定分科会雇用保険部会資料)/雇用保険法第62条・第63条/労働保険の保険料の徴収等に関する法律/各都道府県労働局・ハローワーク









