ぎゅうた「労災の休業補償は”実質8割”だったよね。でも、もし1年以上たっても治らなかったら、その間ずっと休業補償のままなの?」



「いいところに気づきましたね。療養が1年6か月を超えて重い状態が続くと、”傷病補償年金”という年金に切り替わります。長期の療養を支える、次の段階の給付なんです」
傷病補償年金は、労災による療養が長引いたときに、それまでの休業補償給付に代わって支給される年金です。前回解説した労災保険の給付の、いわば「長期療養編」にあたります。
この記事では、1級FP技能士の視点で「どんな仕組みか」「もらえる条件と金額」「休業補償や傷病手当金との違い」を、初心者向けにやさしく解説します。
傷病補償年金は、労災の療養開始から1年6か月を経過しても治らず、障害の程度が傷病等級(1〜3級)に該当する場合に、休業補償給付に代わって支給される年金です。金額は傷病等級に応じて給付基礎日額の313日分〜245日分。自分で請求する必要はなく、労働基準監督署長が決定します。休業補償給付とは同時に受け取れず(切り替わる)、健康保険の傷病手当金とも別の制度です。
傷病補償年金とは?休業補償から切り替わる仕組み
労災でケガや病気をすると、まず治療費が療養(補償)給付でカバーされ、働けない間は休業(補償)給付(実質8割)が支給されます。ところが、療養が1年6か月を超えても治らず、重い状態が続くことがあります。
そんなときに、休業補償給付に代わって支給されるのが傷病補償年金です。「治療が長引く重い労災」を支えるための、次の段階の給付というイメージです。


労災の給付は「療養・休業補償 → 1年6か月経っても治らない → 傷病補償年金」という時間の流れで移っていきます。休業補償のままずっと続くのではなく、長期・重症のケースは年金に切り替わる、という点がポイントです。労災保険の基本や休業補償のしくみは、前回の記事で解説しています。


もらえる条件は?傷病等級と金額
傷病補償年金が支給されるのは、次の3つの条件をすべて満たすときです。
- 療養開始から1年6か月を経過している
- その傷病が治っていない(症状が固定していない)
- 障害の程度が傷病等級(第1級〜第3級)に該当する
金額は傷病等級に応じて決まり、年金(給付基礎日額の日数分)に加えて、一時金の傷病特別支給金と、傷病特別年金があわせて支給されます。
| 傷病等級 | 傷病補償年金 | 傷病特別支給金(一時金) |
|---|---|---|
| 第1級 | 給付基礎日額の313日分 | 114万円 |
| 第2級 | 給付基礎日額の277日分 | 107万円 |
| 第3級 | 給付基礎日額の245日分 | 100万円 |
※このほかに傷病特別年金も支給されます
年金額は傷病等級で決まり、第1級がもっとも手厚く給付基礎日額の313日分です。意外に知られていないのが、傷病補償年金は自分で請求する必要がないこと。労働基準監督署長が状態を判断して決定します(療養開始1年6か月後に「傷病の状態等に関する届」を提出します)。年金は偶数月に年6回、前2か月分がまとめて支払われ、所得税・住民税はかかりません(非課税)。



「自分で申請しなくても、労基署が判断してくれるんだ!重い状態のときに手続きの心配が少ないのはありがたいね」
休業補償給付・傷病手当金との違い
まぎらわしい制度との違いを整理しておきましょう。まず、同じ労災の中の休業補償給付とは「併給されない」関係です。傷病補償年金が支給されると休業補償給付は止まり、年金に切り替わります(傷病等級に該当しなければ、引き続き休業補償給付)。
次に、名前が似た健康保険の傷病手当金とは、まったく別の制度です。傷病手当金は「仕事と関係ない病気やケガ(私傷病)」で働けないときの健康保険の給付。一方、傷病補償年金は「仕事・通勤が原因の労災」で療養が長引いたときの給付です。原因が労災かどうかで使う制度が分かれます。


なお、療養を続けて傷病が「治った(症状固定)」あとに障害が残った場合は、傷病補償年金ではなく障害補償給付という別の給付に移ります。こちらは次回の記事でくわしく解説します。
傷病補償年金のよくある質問(FAQ)
- 傷病補償年金は自分で申請するのですか?
-
自分で請求する必要はありません。労働基準監督署長が状態を判断して支給を決定します。療養開始から1年6か月を経過した時点で「傷病の状態等に関する届」を提出し、その内容をもとに傷病等級が判定されます。
- 傷病補償年金と休業補償給付は両方もらえますか?
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両方は受け取れません。傷病補償年金が支給されると、それまでの休業補償給付は止まり、年金に切り替わります。傷病等級に該当しない場合は、引き続き休業補償給付が支給されます。
- 傷病補償年金と健康保険の傷病手当金は何が違いますか?
-
原因が違います。傷病補償年金は仕事や通勤が原因の労災で療養が長引いたときの給付、健康保険の傷病手当金は仕事と関係ない私生活の病気やケガで働けないときの給付です。労災が原因なら傷病補償年金、私傷病なら傷病手当金と使い分けます。
まとめ
- 傷病補償年金は、労災の療養が1年6か月を超えて治らず、傷病等級1〜3級に該当するときの年金
- 金額は等級に応じて給付基礎日額の313日分〜245日分。特別支給金・特別年金も加わる
- 自分で請求は不要。労働基準監督署長が決定し、年金は非課税
- 休業補償給付とは併給されず切り替わる。健保の傷病手当金とは別制度
傷病補償年金は、労災の療養が長引いたときに生活を支えてくれる、いわば「長期戦の備え」です。休業補償から自動的に切り替わり、請求も不要なので、まずは仕組みを知っておくだけで十分。治ったあとに障害が残る場合の障害補償給付については、次回くわしく解説します。
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【出典】厚生労働省・都道府県労働局「傷病(補償)年金」/労働者災害補償保険法第12条の8/各労働基準監督署









