通勤災害とは?認定の範囲・逸脱中断・業務災害との違いをFPが解説

ぎゅうた

「通勤中のケガは労災になるよね?でも、帰りに買い物したり寄り道したりしても対象なの?そもそも”どこまでが通勤”なんだろう…」

みる

「そこが通勤災害のポイントです。労災には『業務災害』と、もう一つ『通勤災害』があって、”どこまでが通勤か”には細かいルールがあるんです。やさしく解説しますね」

通勤災害は、労働者が通勤の途中でケガや病気を負ったときに労災保険から給付を受けられる制度です。

これまでの労災記事は「業務災害(仕事中)」が中心でしたが、通勤災害はいわば”もう一つの原因”。

この記事では1級FP技能士の視点で、通勤と認められる範囲・逸脱・中断のルール・業務災害との違いを、初心者向けにやさしく解説します。

この記事の結論

通勤とは、就業に関し①住居と就業の場所との往復②就業の場所から他の就業の場所への移動③単身赴任先と帰省先住居の間の移動を、合理的な経路・方法で行うことです。逸脱・中断の間は原則対象外ですが、日用品購入・通院など日常生活上必要な行為を最小限に行い、経路に戻った後は再び通勤です。給付内容は業務災害とほぼ同じですが、名称に「補償」が付かず、療養給付には原則200円の一部負担金があります。

目次

通勤災害とは?対象になる3つの移動

労災保険が補償するのは「業務災害(仕事中)」と「通勤災害(通勤中)」の2種類です。ここでいう「通勤」とは、就業に関し、住居と就業の場所との往復などを合理的な経路・方法で行うことをいい、次の3つが対象です。

①住居と就業の場所との往復
(自宅と職場の行き帰り)
②就業の場所から他の就業の場所への移動
(複数の会社で働く人の会社間移動)
③単身赴任先の住居と帰省先住居の間の移動

なお、出張など”業務の性質”をもつ移動は通勤に含まず、業務災害として扱われます。

通勤災害の対象になる3つの移動(住居と就業場所の往復・就業場所間の移動・単身赴任先と帰省先住居間の移動)を示した図解
上の図のポイント

通勤は「自宅と職場の往復」だけではありません。会社間の移動や、単身赴任先と帰省先の移動も対象です。共通点は、就業に関する移動を”合理的な経路・方法”で行っていること。労災保険全体の仕組みは下の記事で確認できます。

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どこまでが通勤?逸脱・中断のルールと具体例

判断に迷うのが「寄り道」や「経路変更」です。合理的な経路をそれる逸脱、経路上で通勤と関係ない行為をする中断の間とその後は、原則として通勤になりません。

逸脱・中断の例外ルール

ただし、日常生活上必要な行為を、やむを得ない事由で最小限度に行う場合は、逸脱・中断の間を除き、経路に戻った後は再び通勤になります。対象は次の5つ。
①日用品の購入等
②職業訓練・教育
③選挙権の行使
④病院・診療所での診察・治療
⑤要介護家族の介護。

通勤経路の逸脱・中断のイメージ図。逸脱・中断の間は通勤の対象外だが、日用品購入など日常生活上必要な行為を最小限に行い経路に戻った後は再び通勤になることを示した図解
スクロールできます
判定事例
該当する帰宅途中にスーパーで日用品を購入(中断)し、元の経路に戻ってから負傷
該当する単身赴任者が週末に自宅へ帰省し、週明けに自宅から赴任先へ出勤する途中、駅の階段で転倒して負傷
該当しない単身赴任者が長期休暇を自宅で過ごし、出社日の”前々日”に単身の寮へ戻る途中に負傷(就業との近接性がない)
該当しない大学の授業後、自転車で直接大学からアルバイト先へ向かう途中に転倒して負傷(通学は「就業」に当たらない)
通勤災害に該当する事例・該当しない事例
ぎゅうた

「日用品を買うくらいの寄り道なら、経路に戻ればまた通勤なんだね。逆に遊びに行く途中だと難しいのか…」

通勤災害と業務災害の違いは?
名称・200円・待機・解雇制限

給付の中身はほぼ同じですが、いくつか違いがあります。業務災害は事業主に補償責任があるため「◯◯補償給付」ですが、通勤災害は「補償」が付かない「◯◯給付」で、様式も異なります。

通勤災害の療養給付には原則200円(日雇特例100円)の一部負担金があり、休業給付から差し引かれます(業務災害はなし)。また、待機3日間の使用者補償義務や労働基準法の解雇制限は、通勤災害には及びません。

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項目業務災害通勤災害
給付の名称療養補償給付など(「補償」あり)療養給付など(「補償」なし)
療養の一部負担金なし原則200円(休業給付から控除)
待機3日間の補償使用者に補償義務あり使用者の補償義務なし
解雇制限(労基法)あり対象外
給付内容・金額ほぼ同じ(いずれも給付基礎日額がベース)
通勤災害と業務災害の主な違い
上の表のポイント

違いは「事業主の責任の重さ」の反映です。ただし受けられる給付(療養・休業・障害・遺族・介護など)の中身と金額はほぼ同じで、いずれも給付基礎日額がベース。各給付の詳細は下の記事で解説しています。

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通勤災害のよくある質問(FAQ)

帰りに買い物やジムに寄っても通勤災害になりますか?

寄り道の内容によります。日用品の購入や通院など「日常生活上必要な行為」を最小限に行い、合理的な経路に戻った後であれば再び通勤として扱われます。ただし逸脱・中断している間の事故は対象外で、趣味・レジャー目的の大きな寄り道は経路に戻っても認められないことがあります。

通勤災害と業務災害では給付に違いがありますか?

給付内容と金額はほぼ同じですが、名称に「補償」が付かないこと(療養補償給付→療養給付)、療養給付に原則200円の一部負担金があること、労働基準法の解雇制限が及ばないことなどが異なります。金額はどちらも給付基礎日額がベースです。

単身赴任で自宅と赴任先を行き来する移動も対象ですか?

対象になります。単身赴任先の住居と帰省先(家族の住む自宅)との間の移動や、帰省先から赴任先の就業場所への移動(当日または前日など就業と近接したもの)は通勤として扱われます。ただし長期休暇でレジャー帰省し、出社の前々日に戻るようなケースは認められないことがあります。

まとめ

  • 通勤とは、就業に関する①住居と職場の往復②職場間の移動③単身赴任先と帰省先の移動を、合理的な経路・方法で行うこと
  • 逸脱・中断の間は原則対象外。日用品購入・通院など日常生活上必要な行為を最小限に行い、経路に戻った後は再び通勤
  • 業務災害との違いは、名称に「補償」なし・療養給付に原則200円・待機や解雇制限は対象外
  • 給付の種類・金額は業務災害とほぼ同じ(給付基礎日額がベース)。様式は通勤災害用を使う

通勤災害は、毎日の通勤に潜むリスクに備える大切な制度です。「3つの移動」「逸脱・中断のルール」「業務災害との違い」を押さえておけば、いざというとき落ち着いて対応できます。判断に迷うケースや実際の手続きは、勤務先や所轄の労働基準監督署に相談しましょう。

▼ 保険・社会保障の記事一覧はこちら

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【出典】厚生労働省「通勤災害保護制度のあらまし」「労災保険給付の概要」/労働者災害補償保険法第7条・第25条・第31条/労働者災害補償保険法施行規則第8条/労働基準法第19条・第76条/各労働基準監督署

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